Share

第一章 10  冒険者登録試験 その1

Author: KAZUDONA
last update Last Updated: 2025-12-07 09:03:40

 ギルド内の冒険者の部署に大きな声が響く。何だ一体?

「え……? 本当に男性??? ちょっとよく顔を見せて下さい!!」

 ガシッと頬をマリアンナさんに掴まれた。そして俺の顔を近くでじ――っと見てくる。何だろう既視感があるなあ。アーヤ姫も頬を掴んできたし、今日はよく顔をのぞかれるもんだ。

「ええーっと、近いんですが……」

 まだこちらの顔をもう遠慮なしにぐいぐい見てくる。怖えよ。

「信じられない、こんな綺麗な顔なのに……、負けたわ」

 何に? あれー、俺は何かの勝負を挑まれてたのか? 更に回りからガヤガヤと他の冒険者が集まって来る。何なんだ一体。

「マリーさん、マジかよ!」

「この子本当に男なの? どう見ても超絶美人な女の子じゃない!」

「とんでもなく綺麗な子が来たなーと思ってたら男なのか!? 残念だなー」

 とりあえず誰もが口々に俺の性別についてワイワイ騒ぎ出した。まーたこの展開? もういいよ、こっちは辟易だ。て言うか自分でもそう思うしな。早く処理を済ませて欲しい。誰だ、残念とか言う奴は!

「彫刻のような整った顔、スベスベの白い肌、サラッサラで綺麗な髪……、超絶美少女じゃない! まるで唯一神のアストラリア様のよう……」

 マリアンナ=マリーさん、とりあえず放してくれないかな。さらにむぎゅっと顔を掴まれる。もう勘弁してくれ。俺が予想したパターンじゃないが、これはこれで恥ずかしい。

「あのー、そろそろ放してもらえますか……?」

 もごもごと何とか伝えると、マリーさんはようやく手を放してくれた。やれやれだ、ほっぺたが痛い。

「ああーごめんなさいね。あまりにも衝撃的過ぎて……」

「いや、もう慣れてますので……。でも俺は男なんで女性にそんなに近づかれると恥ずかしいですよ」

 至近距離は勘弁して欲しい。男なのでさすがに照れる。

「えーと、登録はどうなるんですかね?」

 さっさと済ませたい。視線が集まるのはキツイ。

「そうですね、いつもはBランク冒険者がいれば試験監督役をしてくれます。武器の扱いの技量と、魔法の試験です。今日は、街の周囲に魔物があまり見つからないらしく、暇している冒険者が多いので。人員も揃っています。すぐにでも試験は可能です。このまま試験も受けて行かれますか?」

 手っ取り早く済むならそれは願ったり叶ったりだ。あー、街の周囲は昨日狩り尽くしたしな。道理で駐在してる人数が多いのか、悪いことしたな。

「えーと、じゃあ書類の再確認をしますね……。ってどの属性も使用可能!? ええええええ!?」

 また周囲がざわつき始めた。騒々しいなあ。

「マジかよそんな奴が存在するのか!?」

「私でも2属性が限界なのに、どういうことなの!?」

 ん、これは無知が招いたってことかな? でもそんなこと知らないし、スキル欄に乗ってるし使えるんだから仕方ない。また目立っている。アリアの馬鹿! そういうことは先に色々教えてくれよ!

「どういうことと言われても……、使えるものは使えますので」

「普通は逆の属性の魔法というものは使えないんですよ。火が使えたら水属性は使えない、聖属性が使えるなら闇属性は使えないって言うように。相反する属性を操るなど古の賢者様にも無理だったと言われてますから」

 マジかよ。そんなこと知らんのだよ俺は。嘘だって吐いてないしな。

「マリーさんよ、試験したら分かることだろ、今日はメンツも揃ってるし。間違ってるならすぐ分かるさ。ってことで剣技の試験はBランクの俺が担当するぜ、俺の名前はエリックだ、頼むぜ嬢ちゃん」

 グッと手を握られる。でっかいな、180㎝以上はあるが身体付きは無駄な筋肉がなく理想的な肉体だ。短めの金髪、明るくてムードメーカー的な奴だな。悪い印象も湧かない、不思議な奴だ。

「嬢ちゃんは止めてくれ。俺はカーズだ」

「おっと悪い悪い、ならカーズよろしくな!」

 声もでかいなー、豪快な奴だ。

「じゃあじゃあ、エリックがやるなら私も試験監督やるわ! 魔法の部門は私が担当する! 気になる新人はチェックしなきゃね!」

「おい、ユズリハ。遊びじゃねーんだぞ。ちゃんとやれんのかよ?」

 どうやら魔法の試験は今エリックと話しているユズリハという女性が担当するらしい。長い耳だが、ここにいるエルフ達よりは少し短い、ハーフエルフってやつかな?

「初めまして、私もBランクの冒険者よ。コイツ(エリックを指さして)とは腐れ縁なの。私は火と風属性の魔法が得意よ。よろしくカーズちゃん!」

 手を握ると更にぶんぶんと振ってくる。背丈は女性体のときと同じくらいだ。これぞ魔法使いって感じのローブにハットを被っている。明るい、陽キャって感じだ。

「よろしく、だがちゃん呼びは勘弁してくれ」

「あっははー、ごめんねー。可愛いもんだからついね(笑) マリーさん、これで試験はすぐできるわよね?」

「そうですねー、うちのギルドで指折りの実力者だし。人選に問題はありませんね。では試験官はお二人にお任せします。ではその前に魔力量を測定させてもらいますね」

 マリーさんが測定値のような台座に据えられたクリスタルの水晶のような玉を持ってきた。なるほど、これで測定するのか。

「この測定クリスタルに魔力を流して下さい。測定なので全力でお願いしますね」

「はい、やってみます」

 クリスタルに左手を置き意識を集中させる、装備に魔力を収束するイメージでいいだろう。瞬間、俺の魔力が渦となって可視化できる程立ち上る。その魔力をクリスタルに集約させたと思った瞬間。

 ピシッ! バキキキキ! バリィィーーーン!!!

「「「「キャー!!!」」」

「「「うわあああ!!!」」」

 割れてしまった。これはどうなるんだ? しかもみんな吹き飛んだぞ。

「おいおい、マジかよ……」

「こんなの初めて見たわ……」

 エリックとユズリハはさすがBランクというか、その場で踏ん張っていた。しかし他の冒険者は魔力の余波で腰を抜かしたり、吹き飛ばされて転がり唸っている。辺りは散らかってぐっちゃぐちゃだ。

「えーと、これはどうなったんだ?」

 カウンターの下からそーっと顔を出したマリーさんは、ワナワナと震えて信じられないという顔で俺を見る。そして砕けた測定器の台座の数値を見た。

「測定不可能……。何よこれ……?!」

 俺ヤバいことしたのか? 測定器壊しちゃったしなあ。謝っておこう。

「すいません、壊してしまって」

 深々と頭を下げる。

「いえいえ、カーズさんの魔力が強すぎてクリスタルが耐えられなかっただけです。気にしないで下さい。測定器は予備もありますしね」

 どうやら問題なかったらしい。ならいい、次にもう試験するのかな?

「今から実技ですか?」

 俺はエリックとユズリハの顔を見た。まだポカーンとしてるみたいだが。大丈夫か?

「はい、では裏手の試験場に行きましょう」

 マリーさんの案内で、俺達は裏手に向かう。

「俺達も見学に行くぜ!」

「私達も行くわ!! なんかすごいことになりそうだし!」

 どうやらここにいる全員が見物に来るらしい。参ったな、あまり目立ちたくないのに。

 ・

 ・

 ・

 裏手にある、まるで闘技場のような舞台に到着。観客席までついてるし、本格的だな。

「この舞台の上で試験をします。武器は手持ちのものでも、そこに備えられている予備の武器でも構いません。一本入るまでが勝負になります。では少々お待ちください、ギルマスを呼んで来ますね」

 そういうとマリーさんは事務所の方へ走って行った。戻って来るまでまだ時間はあるが、とりあえず舞台に上がるか。ほっ、とジャンプして舞台に乗る。さて武器はどうするかな。

 同じ冒険者相手にアストラリア流の刃を向けるのはまずい。下手したら殺してしまう。武器の性能が異常なんだ。剣を刃でガードするだけでも相手の武器がスッパリ切れる可能性もある。魔力を流すなんて以ての外だ。

 うーむ、回避に回るか、それで峰打ちでいいだろう。武器を壊して続行不能にさせるのもありだな。もしガードするにしても剣の腹で受けよう。刃で受けないように気を付けるか。

「よろしく、エリック。お手柔らかに頼む」

「おう、しかしカーズだったか、見れば見るほど見たことのない不思議な装備だな。それは自作とかそういうやつか?」

 ああ、このバトルドレスが珍しいのか。神様が作ってくれたとは言えないしな。

「そうだな、俺の師の手作りだ。動きやすいし防御性能も高い」

 嘘は言ってない。アリアには実際師事しているしな。まあ、ボロが出たらまずいからあまり装備やらの話はしない方がいい。

「エリックはそのデカい剣を使うのか?」

 自分に興味を持ってくれたのが嬉しいのか、歯を見せて笑う。

「そうさ、この大剣バスタードソードが俺の相棒だ。数多の戦いをこいつと一緒に戦ってきたんだ。お前はその腰にある剣、2本持ってるのか。それを使うのか?」

「そうだなあ。そこの練習用でも使おうと思ったが、エリックの大剣じゃあ折れてしまいそうだしな」

 仕方ない、練習用のは鑑定しても粗悪品なのが分かる。エリックの大剣はBランクだ、軽く折られるだろう。

「それは英断だ、そいつらじゃ斬り結んだだけで折れちまうよ。でもお前の獲物はかなりの業物みたいだな。見た感じ普通の剣だが、何となくわかるぜ」

 こいつ、中々鋭いな。完全に隠蔽してるはずなのに、歴戦の戦士の直観ってわけかな?

「そうだな、師から譲り受けた」

 まあ量産できるらしいし、俺専用だしな。

「お前の師匠はきっとすげえ実力だったんだろうな。何となくお前を見てればわかる。まだ存命か?」

 うーん、この世には出てこないから天界か、死んではないが。実力も何も神様だしな。

「この世にはいないな」

「そうか、そいつは悪いことを聞いた。そんな人なら俺も師事したいもんだと思ってな」

 あのポンコツ駄女神にか? 悪いけど止めといた方がいいぞ。頭が痛くなっても知らねーよ?

「師は変わり者だからなあ。教えてくれるかはわからんよ」

「そいつは残念だ」

 その時ギルドマスターらしき人を連れて、マリーさんが戻ってきた。まだ若く見える、高齢というわけではないが老いているという感じはしない。結構できそうだ。ギルマスだもんな。まあ無闇にやたらと鑑定するのは控えよう。

 「ほほう、今日はやけに盛況だな。新人試験にこれだけ人が見物に来るなど前代未聞だ。あの少女のような青年か、皆が注目しているのは」

 こちらに視線を送ってきたので軽く会釈をした。

「ふむ、できるな。エリックが相手か、これはこれは……」

「よー、じいさん。ちゃんと生きてたか。カーズは俺の獲物だ、交代とかはナシだぜー!」

「そんなことはせんよ。あとじじい呼びはやめろ。まあとりあえず殺されるなよ、悪ガキ」

 仲いいな、ギルマスをじじい呼びって。

「カーズくん、ちょっといいかな?」

 おいでおいでと手を上下に振られたので、舞台の端まで進んで座り、顔を合わせた。

「初めまして、ギルドマスター。カーズと申します」

 挨拶くらいはしとこう、ここで活動するんだし、悪い印象は与えたくない。するとスッと右手を出してきた。その腕を掴んで握手する。

「ここリチェスターの冒険者ギルドの支部長ステファンだ。よろしくカーズくん」

 中々の威厳だ、そして落ち着きも雰囲気もある。やっぱ結構できるな、このじいさん。

「よろしくお願いします。まだ受かってはいませんが。登録出来たら色々とお世話になるでしょうし」

「ふむ……、強く良い目をしておるな。しかも魔眼持ちか。珍しい。頼むから手加減してやってくれ。ではな、儂も外から見ている。あんな馬鹿でも殺さんでくれよ、はっはっはっ!」

 魔眼を見抜くとは……すごいなギルマス。年齢からくる観察眼ってとこかな。侮れん。

「てめー! じじい! 誰が殺されるって!? 好き勝手言うんじゃねーよ! すまねえなカーズ、水を差したみたいでよ。思いっきりいかせてもらうぜ」

「ああ、よろしくなエリック」

 マリーさんが外から大声で呼びかける。

「では、実技試験開始!」

 俺達は互いに剣を抜いて、カツンと合わせる。そしてバックジャンプで互いに距離を取る。さてアリアは寝てるみたいだし。ここは俺自身が上手く立ち回る必要がある。鑑定、エリックのレベルは42。雑魚盗賊よりはよっぽどできるな。だが元のステータスも装備による補正値も俺に比べると遥かに落ちる。まずは回避に回って様子を見るか。加減しないと危ないしな。

<精神耐性SS・明鏡止水・未来視が発動します>

 さてどう来る? 2回目の対人戦だ。俺はアストラリアソードを左手に持ち無形の位むぎょうのくらいを取った。勿論アリアに習ったものだ。剣を持った手をだらりと下げ敵の前に立ちつくすという構えである。一見無防備なようだが、『これこそ敵のいかなる攻撃に対しても千変万化・自由自在に対応できるものなのですよー』とアリアが言っていた。

 俺が自分から切りかかるのは武器性能だけでもマズい。スキルも選ばなければならない。だからこそのこの構えだ。アリアめ、まだ寝てやがるな。だがアリアが常にサポートしてくれるとも限らない、俺なりの戦い方を見つけなければならないしな。

「あいつ、エリック相手に構えないぞ。どうするんだ?」

 外野の話し声がざわざわと聞こえる。無視だ、これが構えなんだよ。

「よっしゃ、いくぜカーズ! うおおおおおお!」

 最初は戸惑っていたように見えたが、まっすぐ突っ込んで来るとは、テンペスト・カウンターなら一瞬で片が付くが、下手したら殺してしまうな。ここは回避に徹する。エリックが振り下ろした剣撃を、すれすれでスッと躱す。

「なっ、まだまだァ――!!!」

 エリックは大剣をぶんぶん振り回し、攻撃してくる。だが俺には掠りもしない。斬撃が通る軌跡が先に視えているのだ。それを体捌きと足運びでその場からはほぼ動かずに躱しているんだよ。

 ガキィーーン! 

 地面に剣撃が叩きつけられる。自重もあるため受けるとバトルドレスでなければ大ダメージだろう。だが当たらなければ何のことはない。

「マジかよ、その場からほとんど動かずにエリックの攻撃を躱してるぜ、お前見えるか?」

「いやほとんど見えねー。何だよあの動き!」

 俺がアリアから大剣をもらわなかった理由がこれだ。大きいが故に威力はあるが、その大きさ故に攻撃の型が限られる。叩き切るか薙ぎ払うか、ぶっちゃけそれしか出来ない。それ故に至極読みやすいのだ。その上両手で振り回すために隙も大きいし体力も使う。現にエリックは既にかなり息を乱している。

「はあはあ、すげえなカーズ。ここまで避けられたのは初めてだぜ。だがまだまだァ―――!!!」

 息を乱しながらエリックが再び突進してきた。では賊共を壊滅させたときに得たスキルでも試してみよう。

<スキル心眼が発動します>

 フッと目を閉じる。心眼、目を閉じても他の感覚をより鋭敏にし、敵の攻撃を察知できるスキルだ。しかも視界は360度、死界からの不意打ちにも対応可能だ。寧ろ目を閉じた方がよく視える! エリックが振り回す大剣の動きがより鋭敏に感じ取れる。なるほどこれは便利だ。暗闇で戦うことだってあるだろうし、視力を奪われても致命打になることはない。常時発動させておいてもいいくらいだ。目を閉じたままエリックが繰り出す斬撃を悉く躱す。

「なっ! あいつ目を閉じてやがる!!!」

「おいおい、嘘だろ…。次元が違い過ぎる……」

 ヤバい、ギャラリーが騒ぎ出したな、そろそろ終わらせないとな。

「くっ、カーズお前はマジですげーよ。ただでさえ当たらないってのに、更に目を閉じてるのに当たる気がしねえ」

 肩で息をしながらエリックが吠える。

「だがな、避けてるだけじゃあ勝てねーぞっ!!!」

 上段に構えた大剣を、離れた場所から打ち下ろす。何だ? 武技か?

「いけええええ、武技アーツ 真空斬!!!」

 鑑定、衝撃波を扇状に飛ばす技らしい。さすがに大きく避けないと当たるな。瞬時に右手側に光歩で範囲外へと逃れる。その瞬間エリックが眼前に迫る。これは……、どうやら勘で反応したみたいだな。

「ここだあぁあああ!!!」

 なるほど、俺が回避する前提で武技を放ち、躱して態勢を崩すと踏んでそこを狙ったのか。こういう戦い方もあるんだな。アストラリアソードの腹で一撃をガードする。くっ、中々パワーが乗った一撃だな、でも俺の狙いはこの瞬間だ。

「アストラリア流ソードスキル」

 受けた大剣に自分の剣をススッと搦ませる。弱点看破、大剣のほぼ中心部分が一番耐久が減って脆くなっているようだ。そこに搦ませた剣で一気に魔力を集中させて斬り上げる。

「アームズ・ブレイク」

 ガキィイイイイイイイ――ン!!!

 入れ替わるようにエリックの武器を破壊しながらその背後に回り込む。エリックの大剣は中心部からヒビが入り、

 ピシッ…バキッバリィィ――ン……

 と、つかの部分を残して粉々になった。相手の武器を搦め捕り、弱点看破で視える武器の脆い部分を目掛け、その部分に高圧縮した魔力の一撃を打ち込む。まさしく攻防一体の武器破壊技アームズ・ブレイク。やられる側からすると相当嫌な技に違いない。

 エリックはその場に信じられないという顔でガクリと両手を着いた。

「勝負あり! エリック戦闘継続不可能のためカーズさんの勝ちとします!」

 マリーさんの声が響く。もはや軽く殺し合いになってたぞ。これ絶対試験のレベルじゃないだろ! 天下一武道会じゃねえかよ!

「「「「「「うおおおおおおおおおお――!!!!」」」」」」

 見物客の冒険者達の声が響く。まずいなー、エリック自体に攻撃することが出来なかったとはいえ、愛用の剣を破壊してしまった。悪いことしたな、武具創造のスキルなら創れるんじゃないか? Aランクまでなら作れるはずだ。後で創ってやるとするか。そう思いながらまだ地面を見ているエリックに近づく。

「ありがとう、本気で戦ってくれて。戦い方を色々学ばせてもらった、礼を言う」

 そう言って俺はしゃがみ込み右手を出した。エリックは無言で俺の手を取り顔を上げた。

「強いな、すげーぜカーズ。完敗だ。清々し過ぎて愚痴の一つも出ねえ」

「お前もな、今まで戦った相手では一番だったよ」

 グイッと引っ張ってエリックを立たせる。エリックは俺の手をそのまま上に突き上げるように引っ張る。勝負の相手を称えるポーズだろ、これ?

「お、おい、何だよ?」

 エリックはそのまま見物人達に大声で言った。

「こいつはカーズ! 最高に強え、俺らのギルドにとんでもない奴が来てくれた! お前ら歓迎しろ――――!!!」

「「「「「「おおおおお――――!!!! カーズ!カーズ!!!」」」」」」

 ええー、何で? また無自覚に目立ってしまった。まずいなこれは、やれやれ。

「エリック、恥ずかしいからもういいって!」

「硬いこと言うなよ。お前は強い、俺はお前が気に入ったし、文句を言う奴は許さねえ」

 ひょいっと抱え上げられ、肩車される。勘弁してくれ……。俺はそのままカーズコールが鳴りやむまで大人しく肩車され続けた。

 ただ武器壊しただけだろ……。

-----------------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

「馬鹿エリック、あっさり負けちゃって情けない。でもあの子の動きが凄過ぎたのは確かね、一体何者なのよ? って次は私が魔法の試験するってのに。もう決まったみたいな感じにしないでよね、全く」

 ふふっと笑いユズリハが試験場に向かう。

「どうでしたか、ギルマス、カーズさんは?」

 マリアンナに問われたステファンはニヤリと笑い、

「とんでもない逸材だな。Sランクいや幻のSSランクにも届くかも知れんのう。大切にせねばならんな」

 確かに聞いた、『アストラリア流ソードスキル』と。しかもあの一撃に込めた魔力量、人類の壁を大きく超えている。唯一神の流派の技を使う少女のような美しき剣士。一体どこからきたのやら。

「ではこのまま魔法試験も見ていくとしようかの」

 そう独り言ちて、ステファンはまだ肩車で歓声を浴び、困った顔をしているカーズを優しい目をして見つめた。

Continue to read this book for free
Scan code to download App

Latest chapter

  • OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~   第五章 90  Devastation The Huge Stampede & The Last Demon!

     ヨルムに乗って南門の外まで飛ぶ。「来い! 神剣ニルヴァーナ!」「お願い、ルティ!」「あいよー」「星芒より来たれ! クローチェ・オブ・リーブラ!」  各々が自分の武器を構える。南門前に着地させたヨルムから見る、南門に迫り来るベヒーモスの大軍。東門の方にも反応がある。黒や青や赤など、様々な色をした数十m以上はある巨体に、二本の巨大な角、四足歩行の全身を分厚い獣皮が鎧の様に覆われている。こいつは確かに並の武器じゃ傷一つ付けられないだろうな。 だが俺達には神格に神気、神器やそれに匹敵する武器がある。怖れることはない。そして神気を放った状態でヨルムと両親の再召喚を行った。陽子を破壊できる俺達にとっては紙切れも同然だ。「先ずは挨拶代わりだ。いけ、ヨルム!」「任せよ主! 受けろ、我が輝くブレスを!」 ドゴアアアアアアアアアアアアッ!!! 神気を纏った極光の竜の息吹が、放射線状に放たれ大地を敵ごと抉る! グギャアアアアアアア!!! 凄まじい威力のブレスに、迫り来るベヒーモス共が粉砕されていく。だがまだまだだ、俺の千里眼と鷹の目には、南東にある大迷宮から次々に敵が飛び出して来ているのが視える。どんだけいるんだ? 数万は下らないだろうな。だが俺達だけで掃討する!「アヤ、母さん! 南門の防衛と援護は任せる!」「任せて!」「はーい、漸く母さんの出番ねー」 ババッ! 飛び降りる二人。「イヴァ、親父! 東門にも反応がある! 二人はそっちを頼む!」「よっしゃー、行くぜ猫嬢ちゃん!」「任せるのさー!」 ダンッ!!「全員逆探知を発動させて自分達にターゲットを絞らせろ! エリック、ユズリハ、ディードは目の前の敵の掃除を任せる!」「はい! カーズ様!」「オッケー!」「任せときなー!」 ドンッ! 同時に飛び出す三人。「アリア、視えてるんだろ? 操られてる神獣達が」「ええ、神龍ケツアルコアトルにグリフォン、フェンリルにフェニックス。どうやら大将首は神鳥フェニックスに乗っていますね」「なるほど、ダカルーのばーちゃんの時と同じだな。アリア、グリフォンはお前がどうにかしろよ。ケツアルコアトルは、竜王兄妹、お前達に任せる! 行け!」「ハイハーイ、気が乘らないけど行って来ま―す」

  • OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~   第五章 89  カーズの闘い・迫り来る危機

     舞台に乗ってストレッチをしていると、逆方向からハゲが上がって来た。「「「ハーゲ!!! ハーゲ!!!」」」 うーん、凄い声援だが地味に悪意を感じるな。まあ、あんなのでも国民には愛されてるのかな? とでも思っておくか。俺が毛根破壊したんだが、ちょっと不憫だ。「やはり貴様とは殺り合う運命のようだな。神殺しのカーズ!」 また変なことを言い始めたなあ。厨二か? やだやだ。それにダメージ肩代わり魔道具あるから死なねーよ。「いやいや、偶々くじ引きでそうなっただけだろ? 俺もあの竜騎士と闘いたかったんだけどなあー」「フッ、そうか。俺と闘うのが怖かったということだな」「いや、あいつの方が強いだろ? 意味の分からん敵意をぶつけてくるから、ぶっちゃけお前は面倒くせーだけだ」「おのれ…、貴様……!」「聞いたけどさー、お前自分がSランクの最速保持者だったんだろ? 所詮記録なんていつか塗り替えられるもんだ。今の最速はウチのニャンコだ。そんなしょうもない程度のことでイラついてたらストレスでハゲるぞ? あ、悪い、もうハゲてるんだったな。ごめんなー、ストレスかけて。俺に勝ったら治療してやるよ」 まあこいつの態度次第だけどね。「くっ……、貴様にはSランクの誇りは、プライドはないのか!?」 何だそれ? プライドチキンにプライドポテトか?「ねーな。そんなのしょうもないもんがあったら20ギールで売ってやるよ。後、ウチのPTが美人揃いだとか、邪神を斃したとか、そう言うのが気に入らないんだってな? 只のやっかみだろ。お前はガキか? そんなことにエネルギー割くくらいなら鍛錬でもしろよ、くっだらねーな」「貴様ああー…! 言わせておけば……!」 語彙が少ないなあ。そんなんで口で俺に勝てるとか思わないことだな。これでも元教師、アホなモンペのクレームとかで慣れっこなんだよ。いくらでも口が回るからな。『さて遂に最終戦ですが、ここまで我がリチェスター勢は連戦連勝。そしてリチェスター及び、現在世界中のSランク最強のカーズさんが相手。ハ、ゲフンゲフン、ガノン選手には打つ手がありますかね? アリアさん』『うーん、いや無理ゲーでしょー。レベルも3倍以上の開きがありますし、カーズはああいうヘイトばら撒く小物が大っ嫌いですからね。まあでも手加減しながら色々と技

  • OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~   第五章 88  竜騎士攻略・ハゲVSイヴァ?

     魔導具を起動させて、エリックが舞台へと上がる。そして逆方向からは竜騎士のカセルが舞台へ跳び上がって来る。「「「カセル!!! カセル!!!」」」 凄い声援だな。先程のソフィアの時も凄かったが、この人は相当の人気だ。青銀と群青色の色彩の全身鎧だが、昨日の暗黒騎士のサウロンよりは軽量だ。頭にも竜の頭を模した様なヘルム。FF4の竜騎士みたいな装備だ。そして武器はやはり槍か。穂先が結構長めのスピアだな。刺突にも斬撃にも対応可能な2m程の長さの槍。鑑定、ドラグーン・スピアね……。やはりSランクか。何処で手に入れたんだろうな? 後で聞こう。  スピアとは英語で『槍』を意味する言葉の一つ。槍全般を指す場合は『スピア(spear)』が一般的だが、馬上槍は『ランス(lance)』、長槍は『パイク(pike)』など呼び分けはされている。最も、スピアタイプの槍をランスと呼んでいたりもして、呼称の使い分けは厳密ではない。   スピアとランスはよく混同されるが、決定的な違いがある。スピアは片手もしくは両手で扱うことができる歩兵槍のことだ。振り回し、先端に付いた刃で刺突・斬撃が可能。投擲用のスピアは『ジャベリン』とも呼ばれる。  対してランスは、中世から近代まで主にヨーロッパの騎兵に用いられた槍の一種。語源はラテン語で槍を意味する『ランケア(lancea)』、日本語では、『騎槍』とも訳される。単純に馬に乗った状態での専用武器のため、馬に乗ってない場合は全く使えないシロモノだ。 戦場だけでなく馬上槍試合でも用いられたランスは、『兜・鎧・剣・メイス・盾』と並ぶ、騎士を象徴する装備の一つであり、ファンタジーRPGなどでは、細長い円錐の形に『ヴァンプレート』と呼ばれる大きな笠状の鍔がついたものがよく描かれているが、必ずしも全てのランスがその形状をしているわけではない。 ランスと他の槍との決定的な違いは、基本的に刃物がついておらず、棒の先が尖っているか、前述した円錐型をし、敵対者を突き刺して攻撃するのが最も効果的な武器である点だ(この先端の形状は国によって異なる)。また、長さも特徴の一つで 一般的な片手武器の中でずば抜けて長く、4~5メートルを超えるものもあり(一般的なランスは扱い易くするため2m前後だが、それでも片手武器では一番長い)、接近戦闘用の

  • OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~   第五章 87  Sランク対決イベント開幕

     Sランク同士の興行試合の日になった。時間的には昨日と同じくらい。みんなリラックスしながら俺の部屋でスタンバっている。後は城の使いの人が迎えに来るのを待つだけだ。 昨夜の夜這い連中はアヤが目を覚ました時に、ベッドの左半分を占拠する様に鼾をかいてだらしなく寝ていた。そして事情聴取からの当然怒られていた。だからやめろって言ったのになあ。「「「「次はうまくやるし/やります/やるわー/やるのさ……」」」」 まあどう見ても反省してないけどね、こいつら……。全く、なんでこんなことをするんだか……? しかもまたやる気だし…もう知らね。「今日もアリアの姿がないということは……、やっぱり実況やるんだろうな」「昨日楽しそうだったもんねー」 アヤが答える。だよなー、絶対面白半分でやるだろうな。「盛り上がってたし、いいんじゃないの?」「今更なあー、あの人に何か言っても無駄だろうぜ」 エリユズの言う通りだな。あのアホは面白いと思ったことに対しては全力で命をかけてでも取り組むやつだからなあ。取り敢えず俺は両親がゲストに呼ばれないことを祈ろう。念の為に後で念話も送っておくか。「今日は恐らく昨日以上にレベル差がある分、更に一方的になるだろう。相手の仕掛けて来るスキルやら魔法、魔力撃も全て俺らに傷をつけられない。だから取り敢えずは一通り相手の手の内を見てやろう。俺達が先に仕掛けたら、そこで試合終了だ。一応イベントだし、多少は盛り上げさせないとな」「面倒臭いけど、仕方ないわよねー」「ちんたらしてたら先にしばきそうだけどなー」 この二人の戦闘狂なら充分ありえそうだが、折角の貴重な対戦だ。一瞬で終わらせるのは勿体無い。「まあ、そうかも知れないけどなあ。一応相手の戦術やらを見てみようぜ。相手のが俺達よりも形式上は先輩なんだし。あ、そう言えば俺はあのハゲと対決させられるんだろうか? ぶっちゃけ嫌なんだけど」「昨日の対戦順とかも勝手に決められてたし、違う相手かも知れないよ?」 アヤが言う様に、確かにプログラムとかもなかったし、世界的なイベントの割には意外と杜撰だよな……。勝手に実況までやってたくらいだし。盛り上がれば何でもいいのかね? 文化が中世だしそこまでキッチリじゃないのかもな。「そうだな。まあ誰が相手でもいいか。あのハゲは豪

  • OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~   第五章 86  懲りない女性陣・カーズの受難?女難?

     うーん、どうしてこうなった……? 二回目。 城下のお祭りから、まだ食い続けているアリアを放置して某人気走る娘の様に腹ポコ状態のイヴァとルティを回収して帰って来た迄はいい。そしてみんなで一旦風呂にしようということで大浴場に向かった。普通は男湯に入るよね? でも女性体状態でピンクの浴衣に髪の毛も飾られている状態で男湯の暖簾を潜ろうとしてた俺は、女性陣に全力で止められた。まあ、冷静に考えたらこの状態で入るのは問題あるよね。中で男性体に戻ればいいんだが、その前に絶対に全身を「なんだなんだ?」って感じで見られるだろうし……。 でもね、躊躇なく女湯の暖簾を潜れる程、俺は自分を捨ててないんだよ。女性陣に散々説教されて、仕方なく女性体のまま女湯に入り、体を洗って、髪の毛は何故かみんなが我先にと言わんばかりの勢いで洗ってくれた。いやあ、ありがたいけどツラいな……。「お前は毎回無駄に苦労するよな……」 というエリックからの同情と憐れみの視線はともかく、「女風呂に堂々と入れるとか最高っすね、兄貴は!」 と思春期丸出しの発言でチェトレに蹴られていたアジーンにまで、変な気の遣われ方をされるというツラさ。まあね、見た目の性別は変えられるよ。でもねー、中身? 精神は男なんだよ? ウチの女性陣が多分おかしいんだろうと思っていたんだが、いや寧ろ気を遣ってくれているのかも知れないと最近は思う様になってきた。自宅でも女性陣の方が堂々と「一緒にお風呂に入ろうよ」と言って俺を連れて行く。その後で「女性体になってね」って言う感じで。 実際女性体の方がリラックスできるってのはある。男性体を維持するための全身の魔力の緊張を解きほぐすには女性体の方がいいんだよな。それに男性体でも顔の見てくれがね……、てことで男性陣は余り一緒に風呂ってくれない。全くこの思春期童貞共め……!  女性陣の方が度胸があると言うか恥じらいがないと言うか、肝が据わっている感じだ。一応男なので極力見ない様にしているけど、向こうは堂々と見て来るし、モロに触って来る。もうね、距離感がわからんのだよ。イヴァとかルティは子供と風呂ってる様な感覚、アガシャもそんな感じだ。まあ大抵はアヤも一緒だしな。と言うかアヤがいないとさすがに気が引ける。 タチが悪いのがユズリハやチェトレ、アリアのアホとくっついて

  • OVERKILL(オーバーキル)~世界が変わろうと巻き込まれ体質は変わらない~   第五章 85  折角だしお祭りを楽しもうか?

     うーん、どうしてこうなった……?  祭典、夕暮れのお祭りの街中をみんなと歩いている俺は浴衣を着ている。いや、浴衣が悪い訳じゃないんよ。なぜピンクの女性用の浴衣もろもろのお祭りセットを着せられているのかということだ。そして仕方ないので勿論、女性体になっている。さすがに男性体の状態では違う意味で着れない。このお祭り堪能セットを用意していたのはやっぱりアリアだが、持って来たのはアヤだ。しかもノリノリで。みんなの分も頼んでいたらしい。「折角だから一緒に可愛い恰好をして、日本の夏祭りとか縁日みたいに過ごしたいなー」 などと目を輝かせて言うから、断れなかった。うーん、困った。着付けも髪の毛の飾り付けも全部アヤとウチのメイド組がやってくれた。もうこれまたノリノリで……。でもね、女性体の時の体を見られるのは何故かすんげー恥ずかしいんだよ。あー、いやマジ勘弁して欲しいけど、アヤがこういうシチュエーションも楽しみたいらしいので、もう今更だなあと逆らわないことにした。段々受け入れていってる自分がいるのは確かだが、アガシャに見られるのだけは一番キツかった。いやマジで。 バトル組の男性陣、エリックにアジーンは男性用の紺色やら暗めの配色の浴衣だ。城内で軽く飲み食いしながら待ってくれていた。って言うかそりゃ気まずいよ、それに俺も男性陣なんだけどね……。そしてユズリハにちょくちょく邪魔され悪戯された。クラーチでの悪夢を思い出すよね、これ……。言っとくけど、昔の日本の伝統みたいなことはしてないぞ。ちゃんと下も穿いてるからな。でも上は勘弁してください。 そしてお祭りセット一式をフル装備で城下に出て来たんだが、浴衣を着ている人が結構いることにも驚いたけど、夜店とか屋台とかも西洋のものと同じくらい日本ぽいのが結構あるんだよ。なんだろなあー、この世界は和洋折衷みたいな感じなんだよなあ。屋台には焼きそばとかたこ焼き、りんご飴、お面とか射的(コルク銃ではなくおもちゃの弓だが)、千本つりみたいなくじ引き(これはまず当たらないからやらない方がいいとみんなには言っておいた)、まあ千里眼や鑑定で視えるしね。うん、でも何だか懐かしい気分になる。 浴衣を初めて着るイヴァやルティは子供の様にはしゃいでいた。アガシャも初めて着たらしいが、少し照れ臭そうだったので、「可愛いし似合ってるぞ」と

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status